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2025年 秋号(53号 vol.14 no.3)

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がんと運動について

株式会社ルネサンス 商品開発部
がんリハビリ事業研究チーム スペシャリストリーダー
大阪国際がんセンター認定 がん専門運動指導士
石野田 神

① はじめに

私は大阪国際がんセンターの患者交流棟にあるがん患者さんのための運動施設「ルネサンス運動支援センター」で日頃からがん患者さんの運動指導に携わっています。今回はこのような場で、「がんと運動」についてお伝えできる機会をいただき、ありがとうございます。

がんやがん治療に向き合う中で、体力の低下・筋力の低下などを経験する方は少なくありません。私の働くルネサンス運動支援センターには、何かしらの身体的なお悩み事を抱えた患者さんが多く相談にご来館されてます。色々な要因が考えられますが、手術に伴い術後の術創部の痛みや違和感で関節の動きが低下してしまうケース、抗がん薬治療による倦怠感のため日常の活動性が低下してしまうケース、こういったことを理由に活動量が低下してしまう方もいらっしゃいます。ご高齢の方であれば、活動性低下による体力低下からそのままフレイル※につながっていくこともあります

※フレイルとは、年齢とともに筋力や活力が低下し、病気ではないものの、要介護状態になりやすい「健康」と「要介護」の中間の状態を指します。

体力維持は、年齢やがん種、治療手段によらず誰にとっても日常的な生活の質(QOL:Quality of Life)を保つ上で重要な要素だと思います。私たちルネサンス運動支援センターでは、体力や筋力の低下、術後の肩の痛み、体重のコントロール、浮腫の予防など、様々な患者さんのお悩みに大阪国際がんセンター認定がん専門運動指導士がパーソナル指導やグループエクササイズで対応しています。

② がんと運動

医療の進歩により、「がん=死」という時代から「がんと共生」する時代へと移行しつつあると言われています。とはいえ、患者さんの病状、年齢、性別、治療内容、治療目的など個々人の背景は様々であり個別性が高い。そして進行度合いや様々な治療経過の中で、総合的体力の低下、筋力の弱化、機能障害、精神面/心理面のダメージなど悩み事も人それぞれですので、お勧めする運動も本来は個々人に対してカスタマイズされた内容が提供されることがベストであると思います。近年ではがんと運動に関する様々な研究結果が報告されており、生存期間の延伸や再発リスクの低下、倦怠感やうつの改善、持久性体力や筋力の向上など運動を行うことのメリットが少しづつですが知られ始めています。

③ 運動を始めるポイント

運動を行うメリットがあると分かっていても、誰もが簡単に日常生活に運動を取り入れることができるわけではありません。これまでの運動経験の有無であったり、そもそも運動の好き嫌い、忙しくて時間がない、運動はハードできついイメージ、などなど。そんな方にいつもおススメしているポイントをいくつかご紹介します。

「簡単にできることから始める」

テレビを見ながらひとつストレッチを行ってみる、5分だけ家から出て歩いてみる、など簡単に短い時間でできることがたくさんあります。まずは簡単にできることから始めてみましょう。

「座りっぱなしに注意」

長い時間、座ったままの状態は様々な身体的リスクを高めることが分かっています。10分おき、15分おきという具合に立ち上がる、そして家の中を少し歩く、これも身体活動の立派なスタートなのです。

「ながら運動のススメ」

テレビを見ていたりスマートフォンを見ている時間が長い方は特に注意が必要です。座りながらテレビを見ていても足のつま先を上げたり踵を上げたり、膝を閉じたり開いたり、「テレビを見ながら〇〇運動」のように、ついでに行なう「ながら運動」がお勧めです。

④ おわりに

近年は、「Exercise Oncology(運動腫瘍学)」という、がんに関する運動や身体活動を広範囲に包含する研究領域が日本でも注目され始め、運動や身体活動による患者さんのQOL向上が期待されてると同時にこの分野の今後の発展や社会実装が期待されています。運動には好き嫌いもありますし、ハードなイメージを持たれている方も多くいます。しかし、運動がもたらすメリットもたくさんあり、また特別な場所や機材がなくてもできることが沢山あることを、多くの方に知っていただけたら嬉しく思います。趣味として楽しみながらできる運動・身体活動を日常に取り入れ、継続的に取り組んで習慣化していく。そんなキッカケづくり、場づくりにこれからも取り組んでいきたいと思います。