ピンクリボンNEWS

  • ピンクリボンNEWS

2022年 春号(39号 vol.11 no.1)

icon
PDF

乳がんの情報はアプリにお任せ!

医療法人湘和会 湘南記念病院
乳がんセンター長
土井 卓子

皆さんは、乳がんの最新の情報を知りたくありませんか?よく芸能人の方が乳がんにかかったというニュースが流れると、乳がん検診を受けて早期発見することが大切だと報道されたりします。しかしマンモグラフィは痛いし、被爆するし、高濃度乳房※かもしれないし、自分に合った検診の受け方がわからないと悩んで、結局気になっても何もできない方が多いのではないでしょうか?

※高濃度乳房とは、乳房の中の乳腺の割合が高い状態をさします。高濃度乳房の場合は、マンモグラフィではがんと乳腺の見分けが困難と言われています。詳しくはブレストヘルスナビでチェックしてみて下さい。

 

そこで現在の日本で発症している乳がんの現状から、検診の受け方、自己触診の仕方を解説した動画や良性のしこりの情報、高濃度乳房の解説などの最新情報が手軽に手に入るアプリが開発されました。自分の年齢や状況を入力すると、自分にあった検診の選択肢が出るようになっています。これからも次々と新情報を入れる予定です。是非お役立ていただきたいと思います。

― 検診率向上を目指して ―

私もこのアプリの開発に立ち上げから関わらせていただきました。このアプリを作ろうと思ったきっかけは、マンモグラフィ検診受診率が頭打ちになり、乳がん死亡率も低下に転じてこないことから、どうにかしたいと思ったことです。日本で乳がん検診制度が確立されて22年となりました。最初は15%程度と低かった受診率は上昇し、現在、約44%まで上昇しましたが、そこから横ばいのままです。

死亡率はまだ上昇が続いています。受診率44%といっても、同じ人が繰り返し受診されることが多く、1回も検診を受けたことのない人もまだ多く、この未受診者の中に乳がんが多く隠れている可能性があります。講演会、ピンクリボンウォークなど様々なイベントで受診を呼び掛けても、関心のない方にはなかなか届きません。

― ブレストアウェアネス ―

もし、自己触診が習慣となり40歳になったら検診に行くのが当たり前、自分の乳房のことを理解して異常に気が付いたらすぐ外科、乳腺外科を受診するのが当たり前という社会になれば、受診率も上がり、死亡率も低下してくることと思われます。乳がんの認知をここまで高めることを「ブレストアウェアネス」と呼びます。10代、20代の若い人にブレストアウェアネスを広めておくことが、20年後の受診率を確実に上げていく方法だと言われており、学会や政策での取り組みも始まっています。このブレストアウェアネスは学校教育に入っているわけではなく、普及も容易ではありません。

【鎌倉市の取り組み】

鎌倉市では市の検診事業として20代30代女性を対象に「乳房健康指導」という名称で看護師、助産師などが申込者に時間を取って乳がんの疫学、自己触診の方法、検診の受け方などを説明しています。受講された方からは好評で、指導者の熱意もあって該当年齢になったら検診を必ず受けようと思うと感想をいただいています。この内容をいつでも繰り返し見られるように作成したのがこのアプリです。

また、鎌倉市以外の方にもぜひご活用いただきたいと、全国どこでも無料でダウンロードできるようにしました。自分の年齢や家族歴などを入力すると自分にあった検診の受け方が表示されるようになっています。最新情報を次々載せていくほか、今後はYou Tubeで情報発信されている先生とつなげて動画での情報も使っていただけるようにしていきます。スマートフォンでQRコードを使用していただくか、「ブレストヘルスナビ」と検索してください。

手軽に必要な情報がコンパクトにまとめられていると思いますので、年齢層を問わず、どなたでも自由にご活用いただけると思います。ご家族やお友達にも勧めてあげてください。仕事や家事、育児、介護と忙しく、とかく自分のことは後回しにしてしまいがちな現代女性ですが、自分が健康で明るくはつらつとしていることが職場も家庭も明るくする大切な要因です。輝いた自分でいるために、最もかかりやすい乳がんにも気を付けて先手の対応をしていきましょう。万一かかったとしても怖がって悪化させてしまうことなく早期発見で、上手に乗り越えていきましょう。今後もYou Tubeで動画配信する医師と協力してたくさんの情報を次々と更新していく予定です。ぜひ繰り返しご覧になってください。アプリが少しでも皆様の健康のお役に立てたら幸甚に存じます。男性の方にも知っていただきたい情報ですので、男性の方のご利用も期待しております。