ピンクリボンNEWS

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12号

よくなった乳がんの生存率

乳がんに限らず癌になってしまった場合、究極の問題は命が助かるか否かということです。これを表す尺度に“生存率”といわれるものがあります。例えば、病気がわかってから5年間生存する率を5年生存率、10年間生存する率を10年生存率といいます。

さて毎年12月に米国でサンアントニオ乳がんシンポジウムが開催されます。昨年2010年にも第33回目が開催され乳がんの生存率についての画期的な報告がありました。報告者は世界一のがん治療センターといわれる米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍学のBuzdar教授です。その内容は、同センターで過去60年間の5万6,864例の乳がん患者記録を調査した結果、全体として乳がん生存率が劇的に改善されたとのことでした。

その理由として、早期乳がんならびに局所進行乳がんともにその再発リスクが減少したことが挙げられています。これは、乳がんの治療選択肢が増えたことにあります。

さらに注目すべき点は、転移再発乳がん患者さんの長期生存がかなり増えていることです。例えば、1944〜1954年の10年間では転移再発乳がん女性の10年生存率はわずか3.3%でしたが、85〜94年の間では11.2%、95〜2004年では22.2%に上昇しています。20年以上前では一度転移再発した乳がんは助からないのが現実でしたが、最近では治療法さえ合えば転移再発を来たしても10年以上さらにはそれ以上の生存が可能になったということです。

私自身も乳がんの治療を長年行ってきていますが、転移再発乳がんが治療で消失したり長期にわたって進行が止まったままになったりするケースも少なからず経験しています。20年以上前ではありえなかったことです。これらを可能にした要因としては、乳がんの研究の進歩、化学療法薬・内分泌治療薬・生物的治療薬・その他の新規薬剤の開発と実践、乳がんに対して適切かつ専門的な取り組みの成果、であるとされています。

私個人としては、2010年までに白血病や子宮頸癌のほとんどが治る病気になったことを考えれば乳がんも治る、そんな時代が来ると信じています。

認定NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)
理事長 田中完児