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2020年 冬号(34号 vol.9 no.4)

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コロナ禍における乳がん診療

新型コロナウイルス(以下:コロナとします)に関して、2020年3月にWHO からパンデミック宣言が出されてから、半年以上が経過しました。当初は、医療側の余力の問題により、手術の時期を先延ばししたり、手術を避けて別の治療を選択したりする場合もありました。

緊急事態宣言とともに人の移動が少なくなると、新規感染者数は減少しましたが、GoToにより自粛ムードが解禁されると、感染者数は増加に転じ、第3波に突入した模様です。

東京都では、都内の「感染状況」と「医療提供体制」を2つの柱として7つのモニタリング項目を設定しています。12月3日のモニタリング会議による感染状況の総括コメントとしては、「感染が拡大していると思われる」、医療提供体制の総括コメントは、「体制強化が必要であると思われる」という判断となりました。各都道府県でも同様の傾向です。

さて、このコロナは、乳がん診療にもいろいろな側面から影響を及ぼしています。

 

1.検診の問題

皆さんも定期的に乳がん検診を受けていただいていると思いますが、コロナ騒ぎになった頃は、病院に行くのも心配で、検診を先延ばしていた方もいらしたかと思います。

ただ、いつまで経ったらコロナが収束するかもわかりませんので、予防措置をとりながら、ぜひ検診を受けていただきたいと思います。(コロナ最新情報により状況が変わる場合もありますので、検診施設にご確認いただければと思います。)

 

2.病院に行くと感染するのではないかと言う問題

自治体によっても対応は異なりますが、コロナ患者さんがいる病院を公表しているところもあります。ですが、コロナ患者さんがいても、感染が伝搬しないような措置は取られていますし、お見舞いもご家族すらお断り、出入口は早々に閉じる、外来と入院の導線が交わらないようにするなどの対策が取られているところが大半です。

必要な場合には受診を、急な用件でなければ、処方箋をお近くの薬局にFaxするなどの対応も行なっています。

 

3.通院患者さんの発熱の問題

乳がんの治療中に外来に通院している方が、発熱で病院にいらっしゃることもあります。化学療法などの治療をしている方でなければ、乳腺外科の外来ではなく、保健所などを通してコロナかどうかを調べれば良いのだと思いますが、化学療法や分子標的治療薬などの治療中となれば、その他の原因も調べなければなりません。

まず、コロナの抗原検査、CT検査を行い、コロナが否定されれば、治療に関連する肺炎などを疑わないといけません。コロナが否定されるまでは、他の患者さんと同じ待合室と言うわけにはいきませんので、別のお部屋で待機していただきます。このような点からも、熱があった場合には、あらかじめ病院にご連絡いただけると助かります。

 

4.院内・院外の勉強会/学会など

治療方法は日々進歩しています。医師、看護師、薬剤師、など多職種を交えての勉強会は欠かせません。今年3月以降は院内でのカンファレンスすら開けない状況になりました。このような状況を打開するため、web会議が多くなりました。

乳がん関連では一番大きな「日本乳がん学会」も延期され、webでの開催になりました。最近ではweb形式を用いた会議やセミナーが多くなりました。

院内でも、密にならないように心がけて、勉強会を少しずつ再開し始めました。病気は待ってはくれませんし、新しい薬剤もどんどん出てきます。With コロナではありますが、前に進んでいきたいと思います。

 

5.医療者の体調

私たち医療者も人間です。当然予防措置は適切に行なっているわけですが、社会で生活する以上、コロナにかかったり、熱が出たりすることはあります。私たちの日常診療は、テレワークと言うわけにはいきません。医療者側の体調にも配慮しつつ、患者さんにご迷惑がかからないように、チームのみんなで協力しあっています。

 

いつ収束に向かうのか、現時点ではまったくわかりませんが、ワクチンや治療薬が使えるようになり、インフルエンザと同じような扱いにできる日が訪れることを願っております。

 

川口市立医療センター
乳腺外科部長
中野 聡子