ピンクリボンNEWS

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28号 vol.8 no.2

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『11人に1人が乳がん』てどう言うこと?

J.POSHでは正しい乳がんの知識を広める事も活動の一つになっております。そのため、乳がんの現状や経過を正しく把握したいと考え、統計データをウォッチングしております。

「11人に1人が乳がんになる。」啓発パネルやリーフレットにも書かれていますが、「この情報の出典元はどこ?」というご質問の他に「乳がんの罹患者数(患者数)は?」「乳がん検査の受診率は?」などの質問が多く寄せられます。これらのデータの出典元は、「国立がん研究センターがん情報サービス(以下 がん情報サービス)」です。

「がん登録等の推進に関する法律が成立」

統計を正しく公表するためには、正しいデータを集めることが大切になります。平成28年1月までは、日本のがん登録においては、都道府県の事業としての地域がん登録が実施されてきましたが、都道府県間で登録の精度が異なることや、国全体のがんの罹患数の実数による把握ができないことが課題となっていました。 こうした中、がん情報を漏れなく収集するため、「がん登録等の推進に関する法律(平成 25 年法律第 111 号)」に基づく全国がん登録が平成 28(2016)年1月より開始され、都道府県が新ルールに従い順次登録を始め、病院等で診断されたがんの種類や進行度等の情報が、病院等から都道府県を通じて国立がん研究センターへ提出され、一元的に管理されることになりました。がん登録によって得られた情報の活用により、正確な情報 に基づくがん対策の実施及び各地域の実情に応じた施策の実施、がんのリスクやがん予防等についての研究の進展並びに患者さんやその家族等に対する適切な情報提供が期待されています。

がん登録情報の活用については、全国がん登録や「院内がん登録※1」によって得られるデータと他のデータとの連携により、より活用しやすい情報が得られる可能性があるが、データの連携に当たっては個人情報の保護に配慮する必要があることが明記されています。

「11人に1人が乳がんになる」(累積罹患リスク)

「がん情報サービス」では、ある年齢までにある病気に罹患する(その病気と診断される)おおよその確率のことで、0歳の人100人からなる集団を想定し、その集団を加齢させて、各種要因で亡くなる人を減らしていき、最終的に0人になるまでにがんに罹患する人数の比率を年代別に計算します。参考に少し古いですが、2005年乳がんの罹患・死亡データに基づく算出結果では

他にも「がん情報サービス」のホームページから「死亡データ」「罹患データ」「受診率」はダウンロードすることができますが、データを使用するにあたっては、使用条件を守る必要があります。

1.改変のない原文の状態で利用する。また、意図が異なって伝わるような部分的な利用を行わない。
2.「がんに関する信頼のおける情報をわかりやすく提供することにより、国内に居住する人々が、適切かつ効果的に情報を活用できるようにすること」 に合致する目的で利用する。
3.出典として、「国立がん研究センターがん情報サービス」と明記する。
4.著作権マーク(C)の記載がある図表、記述がある場合には、使用許諾が必要となります。
出典元の記載がある図表、記述がある場合には、出典元に利用者が許諾を得る必要があります。


「死亡データ」

日本人全体の死亡者数は、厚生労働省「人口動態統計」として公表されています。

「罹患データ」

罹患データには、①全国がん罹患推計値※2と②地域がん登録全国合計値と③高精度地域がん登録値の3つの種類のデータがあります。②のデータは「全国がん登録」が始まった以降となりますが、罹患者数、罹患率がわかります。罹患者の経年動向を見る場合には、推計値データを使用する必要があります。

「受診データ」

がん情報センター受診率データには、国民生活基礎調査による推定値と厚生労働省「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」により把握した住民検診の実施状況について都道府県で集計の2つのデータがあります。国民生活基礎調査では、40歳~69歳の乳がん受診率は、2016年データでは44.9%となっています。ただ、この数字は国の指針として40歳以上の乳がん検査は2年に1度行うに従い過去2年間の受診の有無の数字になっています。
受診者数データは、「政府統計の総合窓口」に地域保健・健康増進事業報告としてインターネットに掲載されています。

「生存率」

全国がんセンター協議会が、生存率調査を行い公表されています。以上のように乳がんの現状を数字で把握することができますが、統計上の前提条件もありますし、言葉の説明もありますので、一度皆さんもご確認してみてください。

※1 院内がん登録:病院で診断されたり、治療されたりしたすべての患者さんのがんについての情報を、診療科を問わず病院全体で集め、その病院のがん診療がどのように行われているかを明らかにする調査です。この調査を複数の病院が同じ方法で行うことで、その情報を比べることができるようになり、病院ごとの特徴や問題点が明らかになるものと期待されています。病院にかかったすべてのがん患者さんという幅広い対象に対して調査を行いますので、病院のがん診療の特徴がよくわかります。

※2 全国がん罹患推計:地域がん登録のデータを元に推計した日本全国のがん罹患数と罹患率。日本では、国の統計として、がん罹患を把握する仕組みがないための推計。しかし、地域がん登録が実施されている都道府県すべての精度が良いわけではく、そのため、比較的精度が良いとされる地域がん登録のデータをもとに「推計」作業が行われてきました。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス